
① 労働者派遣事業
_労働者派遣法は、労働者派遣を「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の
指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を
当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。」(労働者派遣法第2条第1号)
と定義しています。
_したがって、下図に示すように、労働者派遣における派遣元、派遣先及び派遣労働者の三者間の
関係は、①派遣元と労働者との間に雇用関係があり、②派遣元と派遣先との間に労働者派遣契約が
締結され、この契約に基づいて派遣元が派遣先に労働者を派遣し、③派遣先は労働者を指揮命令す
るというものです。
_労働者派遣事業は、従来、労働者供給事業として禁止されていたものの中から取り出して法制化
されたもので、労働者派遣法の制定と同時に行われた職業安定法の改正により、昭和61年7月以
降、労働者派遣は、労働者供給には含まれないものとされています。
(1)派遣事業の種類
(2)派遣事業の業務範囲
※以下の業務については労働者派遣事業を行ってはいけません。
×適用除外業務
Ⅰ.港湾運送業務
Ⅱ.建設業務
Ⅲ.警備業務
Ⅳ.病院等における医療関係の業務(注)
(注)Ⅳの業務でも紹介予定派遣及び以下の場合の派遣は行えます。
※以下の社会福祉施設等において行われる医療関係業務は可。
・養護老人ホーム ・特別養護老人ホーム ・軽費老人ホーム・老人デイサービスセンター
・老人短期入所施設 ・老人介護支援センター・障害者支援施設 ・乳児院 ・保育所
・知的障害児施設・知的障害児通園施設
※以下の施設等の中に設けられた診療所での医療関連業務も可。
・障害者支援施設 ・更生施設 ・労災リハビリテーション施設
・養護老人ホーム ・特別養護老人ホーム
※産前産後休業、育児休業、介護休業中の労働者の業務を行なう場合は可。
※へき地や離島等、医師の確保が困難な一定の地域において行なわれる医師の業務に
ついては、事前研修を条件に可。
※地域における医療の確保のために、病院または診療所の開設者が行う厚生労働省令で
定める場所においての医師の業務については、事前研修を条件に可。
×適用除外業務以外の業務に関わる制限
Ⅰ.人事労務管理関係のうち、派遣先において団体交渉または労働基準法に規定する協定の
締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務
Ⅱ.弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、弁理士、
社会保険労務士、行政書士の業務 (公認会計士、弁理士及び行政書士に係る業務については、
一部に労働者派遣が可能な業務あり。)
Ⅲ.建築士事務所の管理建築士
(3)派遣受入期間の制限
(※1)1年を超える派遣を受けようとする派遣先は、あらかじめ派遣先の労働者の過半数で組織する
労働組合等に対しての意見聴取が必要
(※2)事業の開始、転換、拡大、縮小または廃止のための業務であって一定の期間内に完了予定の業務
(※3)その業務が1ヶ月間に行われる日数が、派遣先の通常の労働者の所定労働日数の半分以下かつ
10日以下の業務(例:書店の棚卸業務、土日のみに行われる住宅展示場のコンパニオン)
図① 派遣期間に制限のない業務
※ 労働者派遣契約の再契約、更新自体は許容されていますが、自動更新条項は認められておりません。
※「あり」の業務については、派遣契約において3年を超える派遣契約期間の定めをしてはなりません。
(4)労働者派遣のフロー(派遣受入期間の制限がある場合)
Ⅰ. 派遣元事業主は、派遣先から「派遣受入期間の制限に抵触する日の通知」がないときは、
労働者派遣契約を締結してはならない。(法第26条第6項)
Ⅱ. 派遣元事業主は、あらかじめ派遣先事業主に対し、許可を受けていること、あるいは
届出書を提出していることを明示しなければならない。(法第26条第4項)
Ⅲ. 既に雇い入れている労働者を新たに派遣労働者とする場合は、その旨を労働者に明示し、
同意を得なければならない。(法第32条第2項)
派遣元事業主は、派遣労働者に対し就業条件ならびに派遣受入期間の制限に抵触すること
となる日を明示しなければならない。(法第34条)
Ⅳ. 派遣労働者の氏名・性別(年齢)・社会保険、雇用保険の資格取得状況・労働者派遣に係
る派遣労働者が期間を定めないで雇用する労働者であるか否かの別・その他の事項の通知。
(法第35条)
Ⅴ. 派遣先事業主の指揮命令による労働。(法第2条1号)
Ⅵ. 派遣元事業主は、派遣先が派遣受入期間の制限に抵触することとなる最初の日の1か月前
から前日までの間に、派遣先及び派遣労働者に派遣停止を通知しなければならない。
(法第35条の2第2項)
※ 派遣期間が1年を超え3年以内の期間継続して派遣を受入れる場合には、労働者の過半数
で組織する労働組合等に対して意見を聴かなければならない。(法第40条の2第4項)
② 平成24年10月1日施行 労働者派遣法改正について
※この度の法改正に伴い、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の
整備等に関する法律」⇒「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関
する法律」と名称も変更となりました。
(1)日雇派遣の原則禁止
日雇派遣については、派遣会社・派遣先のそれぞれで雇用管理責任が果たされておらず、
労働災害の発生の原因にもなっていたことから、雇用期間が30日以内の日雇派遣は原則
禁止になりました。但し、Ⅰ.またはⅡ.の場合は例外として認められます。
Ⅰ. 禁止の例外として政令で定める業務について派遣する場合(※図① 令第4条ご参照)
Ⅱ. 以下に該当する人を派遣する場合
(ア)60歳以上の人
(イ)雇用保険の適用を受けない学生
(ウ)副業として日雇派遣に従事する人
(エ)主たる生計者でない人
※(ウ)は生業収入が500万円以上、(エ)は世帯収入が500万円以上の場合に限ります。
(2)グループ企業派遣の8割規制
派遣会社と同一グループ内の事業主が派遣先の大半を占めるような場合は、派遣会社が
本来果たすべき労働力需給調整機能としての役割が果たされないことから、派遣会社が
そのグループ企業に派遣する割合は全体の8割以下に制限されました。
(3)離職後1年以内の人を元の勤務先に派遣することの禁止
本来直接雇用とすべき労働者を派遣労働者に置き換えることで、労働条件が切り下げられ
ることのないよう、派遣会社が離職後1年以内の人と労働契約を結び、元の勤務先に派遣
することはできなくなりました。(元の勤務先が該当者を受け入れることも禁止されます)
派遣会社:離職前事業者へ派遣労働者として派遣することを禁止
派遣先:該当する元従業員を派遣労働者として受け入れることを禁止
※ 60歳以上の定年退職者は禁止対象から除外されます。
※ 禁止対象となる勤務先の範囲は事業者単位となります。
(4) (5) マージン率などの情報提供及び派遣料金の明示
【関係者への情報公開】
労働者や派遣先となる事業主がより適切な派遣会社を選択できるよう、インターネットなどにより派遣会社の
マージン率や教育訓練に関する取り組み状況などの情報提供が義務化されました。 >>当社マージン率情報
【派遣労働者への明示】
雇入時、派遣開始時、派遣料金額の変更時には、派遣労働者の「労働者派遣に関する料金額(派遣料金)」
の明示が義務化されました。
<明示すべき派遣料金(次のうちいずれかを明示)>
Ⅰ. 派遣労働者本人の派遣料金
Ⅱ. 派遣労働者が所属する事業所における派遣料金の平均額(1人あたり)
<明示の方法>
書面・FAX・Eメールのいずれか
(6)待遇に関する事項などの説明
派遣会社は、労働契約締結前に、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対して、
Ⅰ. 雇用された場合の賃金の見込み額や待遇に関すること
Ⅱ. 派遣元の事業運営に関すること
Ⅲ. 労働者派遣制度の概要
の説明をすることが義務化されました。
(7)派遣先の都合で派遣契約を解除するときに講ずべき措置
労働者派遣契約の中途解除によって、派遣労働者の雇用が失われることを防ぐため、
派遣先の都合により派遣契約を解除する場合には、
・派遣労働者の新たな就業機会の確保
・休業手当などの支払いに要する費用の負担などの措置をとることが、派遣先の義務となりました。
(派遣契約時にこれらの措置について明記しなければなりません)
(8)有期雇用派遣労働者の無期雇用への転換推進措置
派遣労働者が無期雇用になるための機会が少ないことなどから、派遣会社は、有期雇用の派遣労働者
(雇用期間が通算1年以上)の希望に応じ、以下のいずれかの措置をとるよう努めなければなりません。
Ⅰ. 無期雇用の労働者として雇用する機会の提供
Ⅱ. 紹介予定派遣の対象とすることで、派遣先での直接雇用を推進
Ⅲ. 無期雇用の労働者への転換を推進するための教育訓練などの実施
(9)派遣先への通知
派遣労働者が無期雇用労働者か否かを派遣先への通知事項に追加。
(10)均衡待遇の確保
【派遣会社の義務】
派遣会社は、派遣労働者の賃金を決定する際、
Ⅰ. 派遣先で同種の業務に従事する労働者の賃金水準
Ⅱ. 派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験
などに配慮しなければなりません。
教育訓練や福利厚生などについても均衡に向けた配慮が求められます。
【派遣先の義務】
派遣会社に対し、必要な情報を提供するなどの協力が求められます。
(11) 労働契約申込みみなし制度(平成27年10月1日施行)
労働契約申込みみなし制度とは、派遣先が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、
違法状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申し込み(直接雇用の申し込み)
をしたものとみなす制度です。平成27年10月1日からの施行となっています。